北野的読書日記

岩波文庫を中心に、読んだ本の感想を書いていきます。よろしくお願いします。

「ヘンリ・ライクロフトの私記」ギッシング

僕は本の本が好きです。 
例えば読書法の本や、本棚の写真集や、ブックガイドみたいなのが好きです。

「ヘンリ・ライクロフトの私記」はそういった本の中で紹介されていて、ずっと読みたいと思っていました。

なんでも「読書」にまつわる傑作らしいのです・・・。

本著は作者ギッシングの自伝的な作品です。
主人公はずっと日の目を見なかった物書きです。その彼が幸運にも友人の計らいで少なくない額の年金をえられることになり、余生をイングランドの田舎で大好きな読書を楽しみつつ過ごします。
彼の幸運を妬みつつも読み進めていくうちに、読書はこの本の一部ではあるけれども、核となるのはギッシングの哲学・思想であることを感じました。
期待していたのと異なる内容に読書スピードは落ちる一方。夜に読むと心地よい眠りに誘われます。睡魔と戦い、白目をむきながらもなんとか読了しました。
眠くはなりましたが、傑作と呼ばれるのはわかりました。この「私記」の全体を通して作者の社会や人への温かいまなざし、英国への愛情、そして読書の喜びが伝わってきました。
最後に僕が好きな箇所を引用します。「孤独」についての考え方で、すごく共感しました。
 すべての人は定められているのだー「なんじ独りいくべし」と。この人間の運命を逃れえたとうぬぼれている人々は幸福である。そううぬぼれている間だけでも幸福である。しかし、このような幸福に恵まれなかった者は、少なくとも、もっとも痛切な幻滅の苦しみから免れることができよう。どんなに不快であっても真実と対決することは常によいことではないだろうか。きれいさっぱりと無益な希望を捨てた心は、その代償として日ごとに澄みきってゆく平静さをうることができるのである。とに澄みきってゆく平静さをうることができるのである。

ヘンリ・ライクロフトの私記 (岩波文庫)