「銀河鉄道の夜」宮沢賢治
宮沢賢治の代名詞でもある表題作のほかに、14編の短編が集められています。一つ一つの短編に特徴があり、たくさんの「かわいい」、「おもろい」、「こわい」、「わけわからん」そして「美しい」が詰まっています。
どれもよいのですが、僕はやっぱり「銀河鉄道の夜」がお気に入りです。
銀河ステーションを出発したあとに繰り広げられる美しい世界はもちろんですが、僕が惹かれたのは主人公のジョバンニやカムパネルラが見せる子ども特有の感覚とその描写です。
いくつか抜粋します。
(同級生に自分の父親をからかわれて)
ジョバンニは、ぱっと胸がつめたくなり、そこらじゅうきいんと鳴るように思いました。
(カムパネルラと列車の中で出会うが、彼が苦しそうな様子なのを見て)
するとジョバンニも、なんだかどこかに、何か忘れたものがあるというような、おかしな気持ちがしてだまってしまいました。
このような文章を紡ぐ宮沢賢治というひとは、子どものこころと、大人として子どもをいつくしむこころを持っているのだろうと感じました。
美しいファンタジーとして有名な「銀河鉄道の夜」ですが、そこに純粋な少年の感覚が混合され、切ないような、胸に迫るような物語となっています。