北野的読書日記

岩波文庫を中心に、読んだ本の感想を書いていきます。よろしくお願いします。

「君たちはどう生きるか」吉野源三郎

本屋で平積みされていて、目に止まったのがこの本との出会いです。池上彰さんがテレビで紹介したりして、結構知られるようになっていたようです。結果、平積みされ、この本と出会うことができました。

僕はこの本が大好きです。おそらくこれからの人生の中で何度もこの本を開くことになるでしょう。素晴らしい本に出会うととても幸せな気持ちになります。

この本は少年少女に向けて書かれたものです。なのでとても平易で、わかりやすい文章で作者の思いが綴られています。わかりやすいのですが、その内容は非常に哲学的で、最終的には生きていく意味について考えさせられる内容となっています。

主人公は中二男子の本田君です。あだ名は「コペル君」。なぜこのあだ名がついたのかはとても重要な意味を持っています。
いくつかのエピソードが納められていて、そのどれもが素晴らしいです。
その中で僕が一番好きな話をひとつ。

コペル君は親友が暴力を受けていたのに、こわくて親友を助けることができませんでした。後悔で苦しんでいるコペル君に対して彼のお母さんは自分の経験を話します。
お母さんも若かった頃に困っている人を助けなかった経験があること…
そのことが今でも心に深く根を張り、ときどき当時の記憶や後悔が蘇ること…
しかし、お母さんは「助けなかった後悔」をネガティブには捉えていません。

お母さんの言葉には人間の優しさや強さがはっきりと現れています。そしてそれは、作者が若者たちに伝えたかったことなのだと思います。

あの石段の思い出がなかったら、お母さんは、自分の心の中のよいものやきれいなものを、今ほども生かして来ることができなかったでしょう。人間の一生のうちに出会う一つ一つの出来事が、みんな一回限りのもので、二度と繰り返すことはないのだということもーだから、その時に、自分の中のきれいな心をしっかりと生かしてゆかなければいけないのだということも、あの思い出がなかったら、ずっとあとまで、気がつかないでしまったかも知れないんです。

君たちはどう生きるか (岩波文庫)