北野的読書日記

岩波文庫を中心に、読んだ本の感想を書いていきます。よろしくお願いします。

「濹東綺譚」永井荷風

永井荷風の「濹東綺譚」です。
以前に、僕が好きなエレファントカシマシの宮本さんが雑誌の中で「荷風はすごい」と言っていて、興味を持ったのが、この本を読むきっかけです。古本屋で買ったのが5年前、それからずっと本棚でひっそりしていたのを、「あ、これ岩波文庫やん」ということで日の目を見ることとなったのです。

話のあらすじです。
主人公は、60歳近い小説家です。彼が25、6歳の娼婦に恋心のようなものを抱きます。彼女も同じ気持ちを抱きます。娼婦は主人公に「一緒になりたい」と伝えますが、主人公は「僕は若い彼女にはふさわしくないし、彼女が思っているような男でもない」と考え、娼婦のもとにも通わなくなります。
で、おしまいです。
そのことが関東大震災後の浅草や銀座の風情、季節の移り変わり、そして頻繁に現れる「ドブ蚊」とともに描かれています。ちなみに「ドブ蚊」はすごく出てきます。彼らの羽音まで聞こえてきそうです。

あらすじだけ読むと、ひどい話だと思います。老いらくの恋で、不快感を覚える人もいるかもしれません。
しかし、僕は読み終わったあと、何か「すごい話」を読んだような気になりました。この物語のどこからその印象が生まれるのか、巻末の竹盛天雄氏の解説を読んで、やっとその「仕掛け」がわかりました。
解説の解説をするのは野暮なので、このへんにしときます。
気になった方はご一読を。180ページくらいで薄いし、文字も大きいし、挿し絵も多いし、読むのに時間はかかりません。

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)

papyrus (パピルス) 2008年 04月号 [雑誌]