北野的読書日記

岩波文庫を中心に、読んだ本の感想を書いていきます。よろしくお願いします。

「車輪の下」ヘッセ

この本は中学生のときに父に「読むべし」と言われていながら読んでいなかったものです。中学校の国語の先生も「読むべし」と言っていました。父と先生いわく、「思春期に絶対読むべき本」であると。

僕はもう思春期ではないし、子どももいるし、中肉中背中年男です。そんな僕ですが、ついに読了しました。
結果から言うと、すごく心に残る読書体験となりました思春期じゃなくても、この本を読んで感じるところは大きいと思います。

物語は思春期にある少年、ハンス=ギイベンラアトの心の動きを中心に描かれます。
優等生であり、将来を嘱望された少年は優秀な成績で進学します。しかし、思春期の不安定な心と、周囲の大人たちの抑圧により、彼の歩みは悲劇的な結末へ向かっていきます。

読みながら僕の中の少年が悲鳴をあげているのを感じました。感じながら、僕の中の少年の部分に気づかされ、それを何とも愛しく感じました。

読書体験にはそれぞれ「適齢期」があると思います。僕は大人になってからこの本を読みましたが、もし中学生のときに読んだらどう感じていたでしょうか。それを知ることは永遠にできません。ただ確かなのは、この本が「思春期に読み損なっても、それから何十年もたっても、絶対読むべき本」であるということです。

読み終わった後、この感覚はサン=デグジュベリの「星の王子さま」を読んだ後と似ていると思いました。僕は「星の王子さま」が大好きです。この「車輪の下」もそれと同じくらい大切にしたいです。

車輪の下 (岩波文庫)

車輪の下 (岩波文庫)