北野的読書日記

岩波文庫を中心に、読んだ本の感想を書いていきます。よろしくお願いします。

「シッダルタ」ヘッセ

またヘッセしてしまいました。

この本を選んだきっかけは、僕が大好きな本である「3週間続ければ一生がかわる」の中で、著者ロビン・シャーマが紹介していたからです。この「3週間続ければ〜」はタイトルは安っぽいですが、読みやすくてとても良い本です。繰り返し読んでます。

さて「シッダルタ」です。

主人公の名前はシッダルタ。
「シッダルタ」はお釈迦様(ブッダ)の出家前の名前です。しかし、この主人公は同名の別人という設定で、作中で別にブッダは登場します。

シッダルタは聡明なハンサムで、周囲から大きな期待を寄せられる青年です。その彼が親元を離れ、お釈迦様に会って新たな自分を発見したり、遊女と会って楽しんだり、途中で世俗に汚れたり、不良息子に苦しめられたりします。そして、年老いた彼がついに「真理」にたどり着くまでの物語です。

読んで、やっぱりヘッセはお釈迦様の物語を書きたかったのだと思いました。書きたかったけれど、やはり特定の宗教の開祖の物語を書くことはできず、あくまで別人です、という設定にしたのだと思います。じゃないとわざわざ主人公をお釈迦様の出家前の名前にする必要がありません。

お釈迦様のようなどれだけ素晴らしい人格を持っていても、やはり人間は苦しむのだということ。

僕が特に心に残っているのは、不良息子に苦しむシッダルタの姿です。

苦しむのは息子を愛しているから。

しかし息子を自分の思うような穏やかな人間にしようとするのは、これは自分のエゴではないのか。息子に対する暴力ではないのか。

息子をあらゆる苦痛から守りたいが、自分にそんなことはできない。
それは自分の父親を思い出したらわかる。自分の父親の大きな愛情に対して、自分は家を捨て、河に身投げする手前までいった。どれだけ愛しても、愛する人を苦痛から守ることはできない。

誰でも苦しむ。
人である以上、苦しむ。

読み終わったあとの感想について説明するのは難しいです。

間違いないのは、自分の中で価値観というか、何かが変わったということ。
自分の感化されやすさに驚くとともに、「車輪の下」を超える衝撃に驚いています。
車輪の下の上です。

シッダルタ (岩波文庫)

シッダルタ (岩波文庫)